1998年2月5日  Mont Blanc du Tacul   face E   (4248m)

ルート: Modica-Noury     5+     500m

 リュドビックと共に朝一のテレキャビンでエギュイ・ヂュ・ミヂへ登る。
(この時期の朝一は8時10分発)この時間帯に登るのはアプローチ用のスキーを
持ったアルピニストが多い。我々もその内の一組。エギュイを出るとコースはスタ
ート、冬の間はバレブロンシュへ行く人のためにロープが張って有る。左側はシャ
モニーまで落ちれば数十秒、だれもが素早くロープをつかんで降りる。ここでだれ
が経験豊富かも分かる。
 平らな所まで来るとスキーをはきコール・ヂュ・ミヂへ降りる。降りながらいつ
ものように回りのコンヂションを見る。タキュ(tacul)には未だ足跡がない。この
時期にはプレートが多いためだ。
 北壁のクラッシック、グロット・シェゲへ向かうコーデが何組か見られる。
我々が向かう西壁へはスキーで10分も掛からない。
 スキーを脱ぎ目的のグロットを眺めながら準備をする。
スキーと余分な物は一つの鞄の中に入れてその場に置き、もう一つの中にコース中
に必用な物とロープの半分50Mを入れる。もちろんもう一人がクライミングに必
用な道具を持つ。目的のルートまで歩いて約45分、氷河も余り開いていないため
簡単に始まりの雪の斜面へアプローチできた。
ここで又ロープの長さを5m程に短くすると、300mの雪と氷の斜面を上がる。
斜面のコンディションも良く1時間弱で登り切ると急なグロットが姿を現す。
思ったよりも氷がない。何週間も天候がよいため多くの人が来たからであろう。
左手に終点地が有るが次が60‾70度なのでロープを少しのばし上がる。
最初の急なグロットの下まで来ると、2本目のロープを出し本格的なクライミング
を始める。何本か急なグロットを登ると一番難しいポイントへ着く。
リュドビックは少し疲れたようで行きたがらない、自分が行くしかない。
見た感じ初めの10mは簡単そうだが岩肌に着いた薄い氷はかなり急なようだ。
アイスピトンを一本置き、ソングルと左の割れ目に入っているコアンソーにカラビ
ナを通し上がる。目の前には雪の山がありそこに登れば急なポイントにピオレを打
てると思っていたが、雪は固くなくて上に乗ることはまさか、ピオレさえもぬける。
あっと言う間に難しいミックスに変わった。ピオレは薄い氷の上に出来た小さな穴
に乗せ、足は後ろの岩肌と薄い氷の上におかれている。
2mぐらいこうして上がると右側に固くなった雪を見つけると、気分は少し落ちつく。
緊張感が少し減るのと同時にうれしさがわき上がる。
残すのは簡単なミックスだけ。
無事に登り着くとすぐ降り始める。経験のあるリュドビックとは早いスペースでお
りられる。ここでも良いパートナーを嬉しく思う。
スキーを履きバレブロンシュを降りる。見慣れ始めた風景の中すばやくおりる。
シャモニーのバーでいつものようにビールを飲む。
このために山に登ったのかも知れないな。

 こんな感じに書くことが出来ました。ご意見を聞かせて下さい。

EMOTO YUJI

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