Date: Thu,  8 Aug 96 17:59:56 JST
From: Norichika Ohmi
Subject: [alpine-climbing 41] POPPO's EURO-alps 1995

  ぽっぽ会の大見です。昨年のマッタホルンとモンブランの記録です。
 取りあえず、アルパインMLに投稿します。
 (先輩の記録です。超長いです。ご免なさい)


’1995年夏ヨーロッパ=マッターホルン・モンブラン=山行報告
                     大阪ぽっぽ会     早川 俊
1.メンバー(ツアーガイド)         森田博之
      (あやしいおじさん腰痛1号)   杉山豊隆
      (あやしい遠征隊隊長)      早川 俊
      (シャモニーのホームレス)    大見則親
      (あやしいおじさん改造人間2号) 伊東敏紀
      (さすらいの料理人)       山本 薫
      (かくれ泣き虫)         榎本初美
      (不良タバコ・麻薬少年)     由良博之
      (ぽっぽの裸の大将)       小寺宏司

2.まえがき
  2年前に毛利さん、森田さん、松井さん、の3名がヨーロッパ山行を行なっ
て以来、ヨーロッパも身近なものとなり、今回のぽっぽ会創立20周年記念山行
の実現に至りました。
約2年前から大ざっぱな計画がはじまり、’94夏合宿あたりからメンバーも
かたまってきて常にヨーロッパを念頭におくようになりました。
 今回わずか実質9日間の山行でしたが、メインにしていたマッターホルンに
9名全員登頂することができ、メンバー全員の熱意に改めて感激するとともに、
毛さんをはじめぽっぽ会の皆さんのご支援に感謝いたします。

3.行動タイムチャート
 (記号説明)  H:山小屋    A:飛行機  T:(登山)電車
         R:ロープウェイ TAXI:タクシー

8月05日(土)関空10:45−A→13:35香港23:30(雨)−A
8月06日(日)→7:05チューリッヒ8:43−T→13:47ツェルマッ
        ト1600m:ロープウェイ等下見
         (曇のち雨)
8月07日(月)ツェルマット(曇)7:50−R→9:00クラインマッター
        ホルン3884m9:30→11:35ブライトホルン4164m 
        (曇時々晴)12:00→13:35クラインマッターホルン
        13:50−R→ツェルマット(雨)
8月08日(火)ツェルマット(曇)10:00−T→ローテンボーデン→リッ
        フェルホルン2927m:岩登り→
         リッフェルベルグ−T→ツェルマット
        ツェルマット(曇)10:00−T→ゴルナーグラード−R→
        シュトックホルン3405m:ハイキング−R→
        ゴルナーグラード−T→ツェルマット
8月09日(水)ツェルマット(曇)6:30−R→7:45シュバルツゼー
        2585m8:00→10:25ヘルンリ.H.
        3260m11:45→14:00マッターホルン下見370
        0m地点→15:30ヘルンリ.H.
8月10日(木)ヘルンリ.H.(快晴)4:00→7:00ソルベイ.H.
        7:45→11:50マッターホルン頂上
        4478m12:00→18:00ソルベイ.H.→
        20:00下山路ロスト3700m地点ビバーグ(快晴)
8月11日(金)3700m地点ビバーグ(曇)4:00→7:00ヘルンリ.
        H.9:00→10:00シュバルツゼー−R→10:30
        ツェルマット14:10−T→20:00シャモニー(雨)
8月12日(土)シャモニー9:00−TAXI,R,T→10:30ニーデー
        グル10:35→13:00テートルース.H.
        3167m→15:00グーテ.H.3817m(曇時々小雨)
8月13日(日)グーテ.H.2:50(晴)→4:43ヴァロ.H.5:03
        (曇)→6:43モンブラン頂上4807m7:00
        (曇ー14゜C)→7:40ヴァロ.H.8:20(みぞれ)
        →10:00
        グーテ.H.10:45→13:00ニーデーグル(小雨)−
        T,R,B→15:00シャモニー
8月14日(月)シャモニー10:00−R→ミディ3845m→コスミック.
        H.→ミディ−R→シャモニー
8月15日(火)シャモニー5:00−TAXI→8:45チューリッヒ
        11:00−A→
8月16日(水)→6:30香港11:00−A→15:20関空

4.内容
8月05日(土)あけみさん、美っちゃん、田中さん、由良さんの友人、早川
一家の見送りを受け、CX503便に乗り込む。航空チケット購入に際しては、
大見さんに尽力してもらい¥175、000という格安チケットを手にいれた。
まずは香港10時間ツアーのはじまりである。
 雨の中、バス・地下鉄に乗って香港ぶらぶら。北京ダックで満漢席のつもりで
レストランを紹介してもらったら、なんと牛飯一膳飯屋お一人様400円コース
であった。貧乏くさい格好で’PLEASE LET ME KNOW THE
 CHEAPER RESTRANT!’と言ったのが悪かったのでしょうか?

8月06日(日)グッと人口密度の減ったチューリッヒ空港に到着。ヨーロッパ
だー。長い飛行機の旅ですっかり日本の垢は振り払われ、気分はスイス。列車で
いざツェルマットへ。
時折雨粒の線がはしる車窓を通して山々を眺める。
 ツェルマットの駅でいきなり登山姿の外国人が「あなたどこからきましたか?」
と日本語で話しかけてきた。ぽっぽは余程外国人に縁が深いらしい。「わたしに
ほんからきました。」とその外国人。DALLEN(名古屋ECC教師)との出
会いである。
 テン場は駅のすぐ横。ちーーと勾配があって寝心地悪そうであるがぜいたくは
言うまい。ロープウェイの下見を済ませて、恐いおねーさんのCAFEで軽食を
とって、買い出しへ向かうが、今日は日曜日。スーパーMM、COOPも休み。
結局レストランでわからんメニューと格闘。
 明日の天気はどーだ?

8月07日(月)夕べの雨で気乗りしない朝を迎えたが、あすなろ山の会の東さ
んが約束通りドームを訪れてくれる。さー行こーか。今日は高度順応をかねて、
お買い得4000mのブライトホルンに登るぞ。
クラインマッターホルンまでロープウェイをとばして3884m。身支度して雪
原へとびだし、いざ4164mへ。どーもこの辺りから山に登ってる間は天気も
我々に遠慮気味に気を使ってくれるようになる。360度の眺望はないものの4
000m初体験、まあまあの出だしに一回目の”アルプス一万尺音頭”(大見振
り付け)がとびだし、ヨーロッパっ子のど肝を抜かした。
 ツェルマット近くのハイキング道横でDALLEN等に会って、ボルダリング
やって、地元の少年の登りっぷりに感心しながら雷に追われるように退散。
 雨の後、夕方顔を出したマッターホルンは、すっかり雪化粧の白粉姿であった。
夜半激しい雨。

8月08日(火)昨日より美しい真っ白のマッターちゃん。う〜んマイッタちゃ
ん。マッターホルンをあきらめてモンブランに浮気するかどうか早朝ミーティン
グするが、結局ガイド協会の助言に頼ることにする。
 初っちゃんの「マッターホルンに登りたい!」の一念が通じたか、ガイド協会
のおねーさん曰く「明日、明後日大丈夫!2時間で雪は解ける。」の助言に勇気
りんりん。DALLEN等は今日からヘルンリ.H.へ入るという。
 ツェルマット残留が決まれば今日はフリー日。由良、初美、小寺と4人でリッ
フェルホルンへ岩登りへ出かける。ここは登山電車のローテンボーデンからすぐ
のところ。
 観光客から離れて、東稜から西稜にぬけ3級の岩場で遊ぶ。はじめて触るヨー
ロッパの岩に少し緊張しながらも、楽しく高度感を味わう。ここはゴルナーグラ
ード氷河に接し、ぐるりをマッターホルン、ブライトホルンの山々に囲まれ景色
も格別。またガイドがマッターホルンの客を連れて、トレーニングする岩場でも
ある。同じようにここで遊ぶのもいいトレになるでしょう。グレードの高いルー
トも一杯あるゲレンデです。

8月09日(水)いよいよヘルンリ.H.へ。シュワルツゼーのロープウェイ駅
でいきなり現れたマッターホルンのあのくびれた頭頂部は「ほっほー、登ってく
るかね、来るなら来なさい。」と思いっきり威圧してくれ、なんとちっぽけな私
たちを不安のどん底に陥れてくれた事か。しかし、ヘルンリ.H.に近づくにつ
れ、だんだん身近になってくれてひと安心。
 下見は必須。ソルベイ.H.まで行ければ申し分ないが、とにかく14:00
まで行動することにする。
 ルートは絶えず東壁内で展開するが、左に寄りすぎてガレ場に入るとルートを
はずれている。ガレ場に入ったな、と思ったら戻って右上にルートを探してみよ
う。北壁を眺められる快調な稜線を登り、小さなルンゼを上がって、左のガレ場
に出た所で14:00。このガレ場を左上部に抜けると、しばらくしてソルベイ.
H.の下部モズレイスラブにでてソルベイ.H.が望見できるはずである。37
00m弱の地点。翌日、結局ここで道に迷いビバーグとなる。

8月10日(木)目が覚めたら3:20。ざわざわみんな行動開始で気が焦る。
トイレを済ませる間に他のパーティーはほとんど出発してしまい、大見・山本P
 早川・伊東Pが取り残される。あわてて追いかけるが初っぱなから渋滞で、な
るようになるさ、の気分。かえってこの行列ならルートミスもなかろう。しばら
くして、杉山P,愛知労山(洞川さんP)をパスして森田・小寺Pをとらえる。
もうソルベイ.H.も間近であり、モズレイスラブでは後続のために、ザイルを
フィックスする。フリーでも登れるが、やはりスタッカットで確保したい。ここ
まではノーザイル。ソルベイ.H.をはさんでこのモズレイスラブ上下各1ピッ
チが交通渋滞でソルベイ.H.では45分の時間待ち。
 ソルベイ.H.から伊東さんとアンザイレンし、極太フィックスロープがでて
くる肩部まで快調にコンテで進む。このころから頂上をきわめて下山してくるガ
イドたちとのすれ違いが始まり渋滞時間待ちに拍車がかかる。時間があっという
間にすぎていく。
 極太フィックスロープがなくなると、ピークまでは3ピッチ。由良Pと早川P
のザイルを2ピッチフィクスするが支点はなく、由良さんは岩で、早川はハーケ
ンを2本打つ。早川ザイルは残置して登頂したのだが、下山時にびっくりしたの
は、この支点に群がるように後続パーティーがぶら下がっていたこと。「おいお
い、このハーケンあまいのに抜けたらどーすんの。」あわてて、岩から支点を追
加した始末。
 さー残り1ピッチで頂上。足の方が思うように動かないが、もう頂上はすぐそ
こ。由良、小寺の待つピークへ到着すれば、そこは360度の眺望。「長かった
なー。今あの尖ったてっぺんにいるんだなー。」”アルプス一万尺音頭”を踊る
広さはないが、思ったより安定した頂上だった。
 涙チョチョギれるということはなかったが、なんか興奮別天地のうかれぽんち。
という不思議な感動であった。初ちゃんは当然ここで涙。杉山さんとの熱い抱擁
があったそうである。
 もう12時前、急いで下山しないとこの長さを明るい内に下りきれない、と気
が焦り出す。問題は上部を安全にこなすことと、ソルベイ下のルートに迷わず昨
日の下見地点までたどりつけるかどうか。
 由良、小寺、伊東3名で先に降りてもらい、早川は後続を待つ。待つこと小1
時間。急いで下山開始だが、このとき打ち合わせを行わず、しかもパーティーを
再編成せず6名一緒に下山したのがまずかった。3本のザイルが有効に回らず、
しかも懸垂で降りていくわけだが、練習不足でスムーズなリズムにのれない。加
えて他パーティーとの支点の順番待ち。肩部について、懸垂も終わり皆のいらい
らもピークに達した頃リセットボタンをおしてパーティーを再編成し、コンテに
移行した。今だから笑っていえるのだがあのときは「なにしてんねん!」と誰に
あたるでもなくアドレナリンが増加してしまった。ど〜も申し訳ない。
 さて、リセットボタンを押したものの時間までリセットされるわけでもなく、
無情にも刻々と時間はすぎてゆく。「ソルベイ小屋でひと休みする?」の声にも
’94夏の鬼川復活で「うんにゃ、休憩無し!」といわしめてまで下山したのだ
が、結局、前日下見の到達地点(3700mガレ場)で暗くなり、しかもルート
がわからなくなる。「昨日この辺りまできたんやで、左下の方に寄っていけば稜
線沿いに出るはずや」とかなりしぶとく探したけれど、結局ギブアップ。あっと
いう間に22:00になっていた。
 しかたなくビバーグとなり、今宵の寝床を選定する。6人一張りのツエルトで
平坦な所に座れて、落石の危険がなくて、自己ビレイがとれるところ。を探した
が、そんなところ在るはずもなく何とかけったいな格好で座り込む。「あ〜本当
にこんなに安定した天気でよかった。変に気負ってビバーグなんかしない!と準
備を怠ったって、やばかった。」と猛反省。
 このころヘルンリ.H.では伊東さんらと小屋の人がチロチロ動くヘッドラン
プを見て「いまごろ行動しているのは日本人ではない。あれはクレージーだ。」
と話していたそうな。ソルベイ.H.まで一緒だった人たちはヘルンリ.H.に
22時に着いたそうである。また私たち以降のパーティーや夕刻登ってきたパー
ティーはソルベイ.H.に入った。
 マッターホルンを枕に月明かりに浮かぶ氷河や山、ツェルマットの街を眺めな
がらほとんど眠られず。早朝登ってくるパーティーを道案内に下山。7:00ヘ
ルンリ.H.

8月11日(金)第一目標のマッターホルンがおわり、気も抜けてしまったが、
ともかく寝不足のからだに鞭打って列車でシャモニーへ移動。
 小雨のシャモニーの街はツェルマットのように観光者だけの街というのではな
く、観光の中にも生活の臭いがプンプンするところ。「あ〜もう何もしない。山
にも行かない。ここでぶらぶらのんびりする!」と山屋には危険なところ。明日
の運命やいかに。

8月12日(土)もう今日は停滞かな?という空気の流れる中「さて、今日グー
テ小屋までいく人は挙手!」のかけ声に全員の手が挙がっていました。
 曇天の中ニーデーグルを発ってテートルース小屋へむかうが、初ちゃんの調子
が悪そう。時折小雨の降る中、初ちゃんが見える範囲で一人歩いていると、前日
のビバーグの事やガイドブックの’グーテ小屋まで10時間かかるようでは云々
’やモンブランへの過大評価の為に「今日の初ちゃんには無理だ」との思いが広
がってしまった。「みんな一緒に登るぞ」という日本での思いが片すみへ。入れ
替わり、「モンブランでなくてもシャモニーでの楽しみはいくらでもある。残り
少ない日程でこのままモンブランにつっこんで、もし登れなかったら、他の’目
’までなくなってしまう。」との思いこみが。そしてついに「初ちゃん、降りよ。」
といってしまう。結局テートルースで初ちゃんひとり下山してもらう事となった。
いまだに多少無理しても全員一緒に限界を見れば良かったと後悔している。
 テートルースからグーテへは大クーロアールの左岸稜線を700m直登。この
稜線で石を落とすと大クーロアールのトラバースを直撃する事態になる。また大
クーロアールの終了点にグーテのトイレが2席設けられ、大クーロアールのトラ
バースを一層危険なものにしている。
 グーテ小屋では気持ちのいい小屋の人たちに予約なしでもベットを6床提供さ
れ幸いであった。

8月13日(日)今日はマッターホルンのように順番待ちは無かろうと思ってい
ても、我先にと準備をすすめて出発。小屋からアイゼン装着し、雪原をいく。軽
装で晴天の中出発したものの、小一時間でガスり風も少々。大見、杉山、山本、
早川の4人で先行をおっかける。ヴァロ小屋で合流し、今度は由良、小寺、杉山、
山本、早川が先行。途中山本さんが遅れ、後続にまわってもらう。伊東さんが追
いついてきたが、ザイルとツェルトの都合で無理矢理後続にもどってもらった。
ゴメンナサイ。
 元気いっぱいの由良、小寺を杉山、早川がインターバル歩行で追いかけ、後ろ
から「早い!早い!」とふたりを制する。
 もうその必要がなくなったところが、4807mモンブラン山頂だ。
 御来光が神々しく迎えてくれた。ブロッケンも迎えてくれた。ガスに囲まれ展
望がなかったのが残念だったが、マッターホルンと違い下山に不安が無いため余
裕ではしゃいで下山。
 森田さんが高度障害に苦しんだが、残りはさほどひどい障害もなく、グーテ小
屋で休憩し、初ちゃんの待つシャモニーのキャンプ場へ戻った。

8月14日(月)今日が実質最終日。なのにシャモニーに来てから天候が悪く、
山らしい山を眺めていない。今日は朝から晴天。いざ、山を眺めに行くぞ。と揃
ったメンバーが初ちゃん、伊東、山本、早川。エギュ・デュ・ミディまでロープ
ウェイで散策にでかける。小道具はプラブーツとアイゼンとピッケルの三種の神
器だ。
 エギュ・デュ・ミディはすごい観光客だったが、天気も山ももっとすごい。グ
ランドジョラスもモンブランもタキュルも針峰群もミディ南壁もすごい。遠くに
マッターホルンの穂先が見え、大きな大きな山また山。ヨーロッパアルプスだ〜。
今度はモンブラン縦走だ。ミディ南壁だ。とコスミック小屋までの往復を一歩一
歩まさに’ぽっぽ’してきました。
 ガイアンの岩場では子連れ、家族連れで岩登りに興じる様にカルチャーショッ
クを受けました。短い夏をこうやってみんなで楽しんでいるんですね。
 色々あったこの山行も打ち上げの時が来ました。山の見えるテラスで生演奏を
聞きながら優雅に夕食。由良さんの機転で今年は初ちゃんに生演奏の誕生日祝い
で「HAPPY BIRTHDAY TO YOU」去年に引き続き涙の初ちゃ
んでした。
 徐々に紫色にのまれていく山を見ながら、最後に楽しい仲間と楽しい話で笑い、
飲み、食べ、わたしはいつものように深い眠りにつくのでした。

8月15日(火)朝5時。DOUDOUのタクシーがおでむかえ。チューリッヒ
まで300kmひとっ走り。もうヨーロッパともお別れ。
8月16日(水)関空で:荷物がでてくるのを今か今かと待っていました。麻薬
犬が我々のグループ回りを旋回し、一番怪しそうな由良さんに近づいていくでは
ありませんか。「怪しいのは風体だけだよ」と見ていたら、麻薬犬は執ように由
良さんを嗅ぎ回り、ついに係官が由良さんをボディーチェック。な・なんと彼の
ポケットからビニール袋に入った白い粉が。「えっ!由良さんってそういう人だ
ったんだ。げげっ!」 無事麻薬犬の訓練も易しい例題で終わったようで、私た
ちの’95夏ヨーロッパ山行も終わりました。到着ロビーには優しい顔をした毛
さんと村崎さんが「おかえり。おめでとう。」の手作りカードを掲げてお出迎え。
ぐっ(胸のつかえる音)。ありがとうございました。

5.交通
  航空チケット;格安チケットで往復¥175、000!!確かに安いが直前
  までとれるかどうか確定しない為、不安はつのる。しかし、多少の日程
  調整で何とかなるものだから割り切ってトライするのも手だと思う。
   今回も予定より3日帰国が早まり、ミディ、モンブラン・デュ・タキュル
  は割愛した。
   購入は(株)H.I.S. TEL06−456−3401 
  大見、早川で何度も電話していじめまくった。でもそのおかげで出発の
  5日まえまでチケット入手に努力してくれた。また次回もいじめよう!
    列車;スイスの主要駅でHALF FARE TRAVEL CARD
 (SF90)が購入できる。これで1カ月有効、列車・ロープウェイがスイス
  国内半額になる。ツェルマット・ユングフラウの山岳地方では重宝する。
 (ただし、今回ツェルマットのロープウェイでは半額になっていたかどうか
  多少疑わしい。私たちの無知故かもしれない。)
    タクシー;今回シャモニーからチューリッヒまでタクシーを利用した。
  300km=3時間。F680(¥13500)だがチューリッヒでの
  ホテル代、列車代を考えると高くはない。むしろ午前中の飛行機の為に
  1日移動に費やすより、早朝タクシーを飛ばした方が日程節約になった。
      シャモニーのタクシー運ちゃんMR.MONSIEUR DHOO
  MUN(通称DOUDOU)(英語OK)
  TEL 07 63 50 34

6. テント場
  ツェルマット;駅プラットホームのすぐ横。SF5/1人。受付時間
  8:30〜10:30&16:00〜18:00。DEPOSITにパスポ
  ートを預けてあるため移動日のチェックアウト時間に注意が必要。
        設備は良くないが、一応シャワー有り。駅に近い。
  シャモニー;駅から歩いて15分。設備の整ったCAMPING。繁盛して
  いるので予約をいれた方がよい。ガイアンの岩場まで自転車5分。
        管理人のPHILLIPは陽気なFRENCH
             TEL ?
   ともに街中なので荷物の軽量化はあまり考える必要ない。今回も荷物室よ
   うに2テンを1張りもっていけばよかった。

7.山小屋
  絶対早めに予約をいれた方がよい。そのほうがごたごたしないで済むが、
  予約無しでも、つっこんだらつっこんだでどうにかなる。
(1)ヘルンリ小屋;二軒あるうち向かって、右側の小さい方がスイス山岳会
  の小屋で起床時間が早い=3:00。左側の村営は起床4:30。ただし、
  今回は混んでいたので双方起床3:00であった。スピード第一のマッター
  ホルンでは3:00前にこっそり起きてトイレも済ませ、行動食で朝食を済
  ませて出発したい。テルモスのお湯は前日にもらっておく。1泊2食付
   SF70(¥5600)
   スイス山岳会小屋TEL 67 27 69
   村営小屋TEL     67 22 64       
(2)グーテ小屋;起床2:00。予約なくとも、食堂の床に寝かせてくれる。
   今回予約していなかったが、到着はやく(15:00)ベッドを6床提供
   してくれた。色々気持ちのいいサービスのありがたい小屋でした。トイレ
   は2ヶしかない。早く起きるかあきらめるかである。
   1泊2食付 F235(¥4700)
   TEL 50 53 16 03

8.ガイド協会
   ツェルマット;メインストリートを駅からロープウェイ駅に向かって50
  0m右側。スキーガイドと2棟つづき。ウィンドーに天気予報有り。結構当
  たった。マッターホルン登はん可否についてもアドバイスもらえる。今回も
  雪ついたため。非常に悩んだが、「晴天になれば2時間で解ける。」の助言
  で決心ついた。
   シャモニー;駅から正面の通りを約200m。にフランス山岳会。表に天
  気予報有り。また山小屋のINFO.あり。
         ガイド協会2Fに資料室あり。

9.トレーニング
     まだまだ経験の浅いメンバーゆえ、とにかいろんな本ちゃんを積もう
   ということで’94年夏山山行より参加予定メンバーを中心に合宿を組ん
   だ。当然、各合宿前にはそれに備えた練習を積んだ。
   ’94夏;歩くことが登山の原点とし、縦走を絡めた岩登りで軽量化が
   課題。南アルプス北沢峠〜仙丈〜両俣〜北岳〜バットレス登はん〜広河原
  バッカバッカのばか尾根縦走が辛く、でも「歩くっていいな」の合宿だった。
   ’95冬;北八ヶ岳バリエーションルート。雪山の経験と登はんが課題。
   ’94末に入会された栗田さん、田中さんも急きょメンバーに加わり、
  合宿前には充実したトレを積むことができた。登はんも成功。 
   ’95春;北アルプス涸沢ベース北穂高東尾根等。残念ながら森田、小寺、
  早川は参加できなかったが、合宿の方は新人の栗田さん、田中さん、
  弓山さん、富谷さんを加え成功裏に終わったそうな。うらやましい。
   これらの合宿のあと、ヨーロッパを想定したトレーニングを行った。
   5.14 百丈岩 雨中登下降3往復。と交代で中級コーチ。
   5.20 御在所藤内壁前尾根 (プラブーツ)ここで会った愛知のメン
  バー3名とマッターホルンでも一緒になる。
   5.27 蓬莱峡 プラブーツ.ユマールで夜間登はん2本。28日早朝
  より20本。岩場登下降の体力・精神力つくり。
   6.9   富士山  高度トレ。7月にもう一度やるつもりだったが、
  遠いのでこの一回だけ。結果的にはこの一回で成果あった。
  頂上で一泊し、どーもなかったのは小寺だけ。水分を十分とること、
  呼吸を深くすること、テント内の換気をよくすること。頭痛と吐き気で
  翌朝早々に下山。
   6.17 雪彦山  登下降。すみません早川参加できず、詳細不明。
   6.24 蓬莱峡・不動 プラブーツ.ユマールで登下降30本。修行僧
  の気分でひたすら登り降り。約4時間弱。ユマールも外したフリー、懸垂も
  交える。
   7.2  伊吹山  近場で標高差のあるところということで、体力つく
  りにプラブーツで往復。
   7.9  不動  本番のザイルパートナーとの登はんのつもりだったが
   7.23 須磨〜三宮 もう合宿前のトレとしても定着してしまった縦走。
  今回は荷物も軽くしてジョギングシューズでスピード重視とする。
  下山後ひとっ風呂浴びて、毛さん宅で懇親会。
   7.30 保塁  夜間登下降(2本)とザイルパートナーとのコンテ
  (2周)。体力的には今回の山行で筋肉痛にもならなかった。個々で日々の
  トレを積まれた成果でもありましょう。従って、これらのメニューで体力面
  と岩場の登はん面は満足して良いと思うが、マッターホルンをとって考える
  とザイルパートナーとのザイルワーク・コンテの練習、そして岩場の下降
  (もちろん懸垂を含む)の練習が絶対的に不足していた。登りよりも下りを
  安全に早く!というのがマッターホルンに必要と思う。それでは、どこで?
  ということになるが、沢の登下降をアンザイレンして行うのが良いのではな
  いかと思う。

10.参考文献
  モンブラン山群特選100コース 山と渓谷社 ガストン・レビュファ著
                        近藤 等訳
  ヴァリス山群 特選100コース 山と渓谷社 ガストン・レビュファ監修
                        近藤 等訳
  THE HIKING OF ALPS(絶版)      山と渓谷社

11.最後に
 山小屋2泊、残りはドームテント1張りのなかに9名でそれこそ寝食を共にし
ました。あれだけ楽しい山行ができたのも約1年間の長い準備期間の合宿そして
トレがあったからだと思います。これらを引っ張ってこられた杉山さん、ごくろ
うさまでした。伊東さんは雪彦の事故から2年弱。かなりのリハビリを積まれた
のでしょう、すっかり改造人間としてよみがえり事故以前以上の体力をものにさ
れた様子です。初ちゃんは紅一点でシェフの山本さん共ども買い出しや料理の負
担がかかりました。ごめんなさい。
 反省として、私の経験不足からビバークの十分な準備を怠った。特別な気負い
をもってしまった。モンブランに全員でトライしなかった。コンテと下降の練習
が不十分だった。パーティー編成をもっと早く決めるべきだった。・・・といろ
いろありますが、今回の経験で海外の山をぐっと身近に引き寄せてきました。次
回また今回以上にすばらしい山行が続くよう祈っています。

              
以上、長い文章おつき合い下さいまして、もうしわけありません。

大見 則親

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